
うさぎく、個別株投資をはじめたんだってね
どんな銘柄を買ってるんだい

今は日本の高配当株をかっています
あとドカンと値上がりしそうなGAFAMとかの成長企業も気になっていますね♪

確かにGAFAMは成長力がありそうだね
でも投資をする前に❝成長の罠❞について知っておくといいかもしれないよ
この記事では、膨大なデータから投資の分析を行った名著『株式投資の未来』(ジェレミー・シーゲル著)の要約と解説を行っていきます。
長期投資の重要性や、配当金再投資の効果の大きさなど、見どころは多数ありますが、一番の注目点は、成長株はリターンが高くなりにくいという成長の罠についての記述です。長期投資を行っていく上で理論的柱となる知識が得られるので、ぜひ一読されることをお勧めします。
本書は特に個別株投資を行っている投資家さんに人気があり、表紙が赤いことから赤本と呼ばれ親しまれています。日本株高配当投資のベストセラー本の著者である長期株式投資氏も本の中で影響を受けたと書かれています。なお、長期株式投資氏の本も要約をしておりますので、興味のある方はぜひそちらも御覧ください。
・オートモードで月に18.5万円が入ってくる「高配当」株投資(角川書店)よりちなみに著者のもう一冊の代表作『株式投資』は緑本と呼ばれています。管理人は両方蔵書していますが、緑本の方が内容が難解な上、アメリカに限定される記述が多いので、興味のある方はこちらの赤本から読み始めれると良いでしょう。
こんな方におすすめの記事です。
- 長期で確実に投資を増やしていこうと考える方
- 個別株投資を行っている方
- 成長株への投資を考えている方
- 配当金の扱いを決めかねている方
- 暴落をチャンスに変えたい方
『株式投資の未来』から得られる3つの学び
本書はかなり広範な内容を扱っていますが、この記事では特に読者の方への学びが得られると考える「成長の罠(成長株や成長国への投資はリターンが低くなりがちであること)」「配当金再投資の重要性」「儲かるセクター(ヘルスケア、生活必需品、エネルギー)の存在」に絞って解説したいと思います。
「成長の罠」高い期待で利益が出にくい!?
本書の最も学びとなる部分が「成長の罠」という概念です。簡単に説明しますと、高い期待を受けている成長株や成長国はすでに割高な株価がついているために、高値掴みをしてしまい利益が出にくいということです。
成長株はリターンが低くなりがち
著者は成長株のリターンが高くないことを説明し、話題性のない業界が高リターンをあげることを説明するために「成長の罠」という言葉を使い始めました。核心部分なので引用させていただきます。
投資家はハイテク銘柄をはじめ新興銘柄を過大評価し、これといって話題性のない業界の銘柄を無視する傾向がある。そしてこうした話題性のない業界の銘柄は、しばしば目覚しいリターンをもたらす。わたしはここで「成長の罠」という言葉を使いはじめた。技術革新の先端を行き、経済成長を牽引する企業こそ、投資家に卓越したリターンをもたらすとの通念のまちがいを説明する。
(中略)成長率が高いだけでは、リターンは高くならない。ただ高いだけでなく、投資家が株価に織り込む、たいていの場合は楽観的すぎる予想を上回らなければならない。成長の罠が、投資家と投資の成功とを隔てる大きな障壁であることはあきらかだった。
引用:株式投資の未来 日経BP社![]()
GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック(現:メタ)、アップル、マイクロソフト)といった成長株は、高い期待に見合った割高な株価になっているため、期待通りの成長率を維持しているだけではリターンが高くなりません。更に株価が上昇するためにはその高い期待を上回らなければなりませんし、期待を下回った場合は、高い株価をつけていた反動で大きく下げる可能性もあります。
期待を下回った際の成長株の下落はすさまじいものがあります。例えば、米国ビデオ配信大手のネットフリックスは会員増加率が前年の半分になったことが発表されると株価が2割減、10年間ではじめての会員減少が報告されると株価が3割以上1日で下落しました。
成長株は期待が大きいため割高な株価がついており、上昇するためには期待以上の成長率を維持する必要があります。しかも、下落する余地も大きいと言えます。
確かに好況時は資金が集まりやすく、株価が伸びやすいという面もあります。株価が割安な時期に仕込んで好況時に利確できれば大きな利益も出せるでしょう。しかし、割高な株価で取得してしまう場合も多く、長期保有に向くかどうかには疑問が残ります。
中国などの成長国もリターンが低くなりがち
この『成長の罠』は成長株のみならず、成長国にも当てはまります。本書の記述の記述を引用させていただきます。
引用:株式投資の未来 日経BP社 ![]()
一般通念にしたがえば、なるべく成長率が高い国に投資するのが正解と思える。だがこの通念は、なるべく成長率が高い企業に投資するのがまちがっているのとおなじ理由で、まちがっている。中国経済はだれがどうみても、どの国よりも急成長している。だが中国株のここまでのリターンは、目もあてられないほどひどい。株価が高過ぎるからだ。
一方のブラジル株は、1992年にはすでに低迷しており、しかもその後10年間、経済の混乱を受けて低迷しつづけた。結果的に、ブラジル株の配当利回りは一貫して高水準だった。辛抱強い投資家は、話題性ではなくバリュエーションで選び、勝利する。
引用:株式投資の未来 日経BP社![]()
中国とブラジルは同じ新興国と見なされますが、本書出版時においては成長性に大差がついていました。成長力の高い中国はリターンも高くなるかといえば、そうではありません。成長の期待を反映してすでに高い株価がついているため、更なる値上がりのためにはその期待を上回る必要があります。一方でブラジルの成長率は低迷していたものの、高い配当利回りであったため再投資することで目覚ましいリターンを上げることができました。
配当再投資の重要性(下落相場の安全装置、上昇相場の加速装置)
本書では配当金を再投資することの重要性が力説されています。こちらも重要な部分ですので引用させていただきます。
相場が下落する局面で、配当はとくに次の2つの役割で投資家に貢献する。まず再投資を通じて保有株を余分に積み増せるので、これがボートフオリオの価値下落を受け止めるクッションとなる。下落局面に再投資を通じて保有株を積み増す配当の働きを、わたしは「下落相場の安全装置」と呼んでいる。
しかも、買い増した株式は、相場がいったん回復すれば、下落に対するクッションどころでない役割を果たす。保有株数が増すほど、将来のリターンが加速するからだ。つまり配当再投資は、下落局面でプロテクターとなり、株価がいったん上昇に転じれば、「リターンの加速装置」となる。配当を支払う銘柄が、市場がサイクルを繰り返すうちに、最高のリターンをもたらすのはこのためだ。
引用:株式投資の未来 日経BP社![]()
管理人はこれまではインデックス投資がメインで個別株は優待銘柄のみでしたが、為替リスクの回避などを目的に高配当株投資を始めました。
時間をかけて定評のある高配当株の決算資料を10年分程度読み込んで感じたのは、配当金の安定性です。配当金は大きく株価の下がった東日本大震災時やコロナショック時でも、大きく下がる株価に比べて、それほど下がりません。特に連続増配や累進配当(配当据え置きか増配のいずれかを行う)を明言している企業はかなりの粘りを示していました。株価の将来は読めませんが、経営状態が安定している企業の配当は、株価よりも予測が行いやすいです。
不況時には配当金を再投資することで、安く株式を仕込み、好況になった際に大きくリターンを稼ぐことができます。
本書ではアメリカの大恐慌後の30年間に配当金を再投資したシュミレーションを行っています。配当金再投資の力を示す印象的なグラフなので解説と共に引用させていただきます。
引用:株式投資の未来 日経BP社 ![]()
急激に資産が伸びているものが、配当金を再投資した場合のグラフです。株価低迷時に配当金再投資を行うことで保有株数を増やし、株価の回復に乗って大きく資産を増やすことができています。その効果は大きく、大恐慌がなかった場合のシュミレーションに比べて6割も高いリターンを得ています。
*記事を書く際に隅々まで読み込んで気づきましたが、どうやらグラフに誤植があるようで「S&P500」と「S&P500のトータルリターン(大恐慌がなかった場合)」が逆になっていますね。管理人の持っている本は第1版第1刷の初版のため、今購入すると訂正されていると思われます。
儲かるセクターが存在する(ヘルスケア、生活必需品、エネルギー)
本書では世界産業分類(GICS)の10分類に従って分類したS&P500企業のリターンを計算し、特にリターンが大きかったセクターについて書いています。リターンを示したグラフを引用させていただきます。
引用:株式投資の未来 日経BP社 ![]()
1位:ヘルスケア、2位:生活必需品、3位:エネルギー
上にあるものほどリターンが高く、1位がヘルスケア(医薬品など)、2位が生活必需品、3位がエネルギーとハイテクとなります。ただし、出版時点まででIBMのパフォーマンスが非常によく、それを除くとハイテクは冴えません。
医薬品は研究開発費が高い一方で薬の認可が下りると高い利益率で販売し続けることができます。このような利益率の高さもあってか、本書発刊時までの運用成績上位10銘柄には日本でも知名度が高いファイザーが5位、メルクが7位と2銘柄もヘルスケアが食い込んでいます。
また、生活必需品も上位に3銘柄も入っており、1位がタバコメーカーのフィリップモリス、飲料メーカーが続いて6位コカ・コーラ、9位がペプシコとなります。10位以降には17位に日本でも馴染み深いP&G、18位にチョコレートのハーシーが入っています。
不景気でも人間は薬を飲みますし、日常生活を続けるため、ヘルスケアと生活必需品はいわいるディフェンシブ銘柄で景気に売上が左右されづらいという利点も備えています。
特に興味深いのは時価総額が1980年には市場の3割を占めていたのが2000年には5%と大きく縮小したエネルギーが3位につけている点です。エネルギーは投資家から期待されていなかったため、常に株価が割安な反面、配当が高かったため、再投資することで株数が伸び、更に配当が大きくなるという循環で高パフォーマンスが出たと分析されます。
アメリカのデータだが日本でも参考にはできる
あくまでアメリカのデータですが、日本株でもヘルスケアと生活必需品はディフェンシブ銘柄で底堅い値動きをしますし、エネルギーは株価が割安で配当利回りが比較的高いことは共通しています。
ちなみに管理人はヘルスケアとして武田薬品工業とアステラス製薬、生活必需品としてJTと日東富士製粉、エネルギーでINPEXとエネオスを保有しています。
エネルギーは脱炭素の流れもあるので、強く推奨はしませんが、管理人は本書を読んで縮小セクターでもリターンはあるとわかり、金額の割合は控えめですが分散目的で投資しています。
以下の記事に管理人の保有する銘柄から30銘柄で抜き出して作ったポートフォリオを載せています。上に挙げた銘柄も含んでいますので興味にある方は覗いてみてください。
発刊が2000年代の本であるため、ややデータは古く、国は違いますが参考にはなるデータであると考えます。
結論:個別株投資に役立つ知識満載!「成長の罠」を理解してから投資しよう!!

配当金に魅力を感じて高配当株を買ってますが、内心は成長する企業に投資するのが一番って思ってました!

成長株は大きく化けることがあるからもちろん投資するのは間違いじゃないよ
でも成長イコール大きなリターンになるとは限らないんだ
管理人は本書を読むまでは、株で利益を上げるには成長する企業の株を買って値上がり益を狙うのが一番と思っていた時期もありました。(実際には成長する株を見つけることが難しいとわかっているのでインデックス投資を行っていましたが・・・)
しかし、この記事で紹介しました配当金再投資を行っていく前提であれば、成長性が限られるセクターであっても利益で成長の罠の影響を受けやすい成長セクターを上回る可能性があります。
本書は発刊から十数年が経っているいますが、最近の高配当株投資本ベストセラーの著者長期株式投資氏や、著名インデックス投資家の水瀬ケンイチ氏も本書を読んでおり、これからも名著として読まれていくと思われます。本自体は340ページもありますが、アメリカの高齢化に関する記述や引用文献などを省くと200ページ強の分量なので、個別株投資をされる方はぜひ読まれてみてはいかがでしょうか?
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